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音楽レコーディング講座第五回: 音響システムにおけるその他の音響機器

今回は、ミキサー、パワーアンプ、スピーカーについての基本的な事柄を説明いたします。

ミキサーは音響システムの中で「どの音をどこから出すのか」をコントロールする機器です。
また、音を送る際、音量バランスや音質も変えられます。
音楽ライブでPAエンジニアが操作しているのはほとんどミキサーであり、PAエンジニアはミキサーを使って客席に届く音やステージ上の演奏者のモニター音を作ります。
ミュージシャンはライブのPAまで自分でやることは少ないと思いますが、リハーサルスタジオではミキサーを使ってモニター音を作ることがあると思います。

パワーアンプは音声信号を増幅する機器、スピーカーは増幅された音声信号を音として再生する機器です。

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1.ミキサーの信号の流れ

ミキサーには入力部分と出力部分がそれぞれ複数あります。
下記ミキサーは、入力がモノラルで12チャンネル(ステレオを考慮するとモノラル8チャンネル、ステレオ4チャンネル)、出力3チャンネル(ST、AUX1、AUX2)あります。

入力が12チャンネルあるので、それぞれの出力に12チャンネル分の入力音を混ぜて送ることができます。

出力が3チャンネルあるので、各入力の音を3つの出力チャンネルから同時に出すことができます。

一般的に「ST」「MAIN」「MASTER」などと書かれている出力はそのミキサーのメイン出力、「AUX」「BUS」「GROUP」など書かれている出力はそのミキサーのサブ出力です。

これを組み合わせると、このミキサーでは3種類の別々のミックスを作り、3つの別々のスピーカーで鳴らすことができます。
このミキサーを利用したライブ時のシステムを下記に示します。

Gt/Voの人いわく「自分の歌を大きく聞きたい」 →AUX1(Gt/Vo用のモニタースピーカー送り)はVo大きめのミックスを送る

Bs/Choの人いわく「ボーカルは聞こえなくていいから自分のコーラスを聞きたい」
→AUX2(Bs/Cho用のモニタースピーカー送り)はVoを下げてCho大きめのミックスを送る

そしてもちろんST(客席スピーカー)はボーカルもコーラスも音楽的にちょうどよいミックスにする

これはライブPAにおけるミキサーの使用例ですが、ミキサーはこのように「どの音をどこから出すか」を操作できる便利なものです。
レコーディングや放送用途でも様々な使い方があります。

2.ミキサーの各つまみ、フェーダー

入力セクション

このミキサーの場合、入力が12チャンネルあります。
ですので、入力セクションには各チャンネルのつまみなどが横にずらっと12個ほど並んでいます。
理解していただきたいのは。1つの入力チャンネルのつまみは縦一列分だけであるということです。
各チャンネルにつき入力信号を加工したり各出力チャンネルに送ったりすることができます。

1ch分の各つまみの用途

マイク入力端子:
XLRケーブルを接続して、マイクなどからの音を入力します

フォン入力端子:
フォンケーブルを接続して、キーボードなどからの音を入力します

PADボタン:入力感度を低くします

GAINつまみ(Trim):
入力時の感度を調整します。ダイナミックマイクは信号が小さいので高めに、キーボードなどは信号が大きいので低めに設定します

HIGH/MID/LOWつまみ:
イコライザーです。この入力チャンネルの音質を変えることが出来ます。

AUX1つまみ:出力チャンネル「AUX1」への送り量を調整します
AUX2つまみ:出力チャンネル「AUX2」への送り量を調整します

PEAK ランプ:
入力段で過大入力の場合に点灯します。点灯したらゲインを下げるか、PADを入れます。

SIGNAL ランプ:
入力信号が感知された場合に点灯します。GAIN設定時にこれが点灯するまでGAINをあげます

チャンネルフェーダー:出力チャンネル「ST」への送り量を調整します

1ch分が理解できたら、あとは12chでも24chでも似たようなものが並んでいるだけです。

出力セクション

ST出力端子:
「ST」に送った音がここから出力されます

AUX1出力端子:
「AUX1」に送った音がここから出力されます

AUX2出力端子: 「AUX2」に送った音がここから出力されます

STフェーダー:
「ST」の出力音量を調整します

AUX1フェーダー:
「AUX1」の出力音量を調整します

AUX2フェーダー:
「AUX2」の出力音量を調整します

ミキサーの出力端子にはフォン端子、XLR端子などが使用されます。

3.音が出ないとき

上記で見てきたように、ミキサーには入力されてから出力されるまでの間にたくさんの音量調整部分があります。
音の経路の中でどこか一つでもつまみが0になっていると音が出ません。
音がでない時に闇雲にミキサーを触ると、何かの拍子に急に大音量が出て機器を壊す可能性がありますので、そのような時は1ヶ所ずつ順番に確認します。

1 入力は来ているか
ミキサーのチャンネルフェーダーおよびマスターフェーダーが下がっていることを確認し、音が入力されている状態でSIGNAL ランプが光るか確認。
光らない場合、PADスイッチが入っていればオフにし、ゲインを上げてみる。
それでも光らなければ、信号が入力されていないので、楽器側(ケーブル以前~マイクor楽器、まで)の問題。

2 音は出力まで通っているか
出力セクションにあるメーターが振れるか確認。
入力は来ているのに振れない場合は出力まで音が通っていないので、チャンネルミュート、チャンネルフェーダー、マスターフェーダーを確認する

3 出力のミュートがオンになっていないか

4 パワーアンプの電源はついているか。ボリュームは上がっているか

注意点
「ミュートされていた」などの間違いを発見した場合、突発的な大音量の発生を防ぐために、フェーダーを落としてから設定し直し、少しずつ音量をあげます。

4.パワーアンプ

ミキサーからの出力信号(ラインレベル)はマイクからの出力信号(マイクレベル)よりは大きいのですが、それでもスピーカーを鳴らせるパワーではありません。
ミキサーからの出力信号をスピーカーを鳴らせる大きさ(スピーカーレベル)にする機器を「パワーアンプ」と言います。
パワーアンプからの出力はスピーカーケーブルを使用してスピーカーと接続します。
パワーアンプの入力端子には、フォン、XLRなどが使用されます。
パワーアンプの出力端子には、フォン、XLR、スピコンなどが使用されます。
ちなみに、ミキサー出力(ラインレベル)をアンプを経由せずに直接スピーカーに入力しても、音が小さすぎて使えません。

5.スピーカー

スピーカーは入力された信号を音にして再生する機器です。
スピーカーの入力端子には、フォン、XLR、スピコンなどが使用されます。

スピーカーの指向性

マイクの音を拾う範囲について「指向性」という言葉で説明しましたが、スピーカーにも音が飛ぶ範囲というものがあり「指向性」と言います。
スピーカーは前方横方向に角度にして60度~90度、縦方向に角度にして15度~45度くらいの範囲によく音が飛ぶように作られており、真横や後ろなどにはあまり音が飛びません。
PAではマイクとスピーカーの指向性を利用してハウリングを回避したりします。

6.パワード機器について

「パワード~~」というのは、「パワーアンプ内蔵~~」という意味です。
パワードミキサーはパワーアンプ内蔵ミキサーですので、出力(スピーカーレベル)からスピーカーケーブルで直接スピーカーに接続して使用できます。
パワードスピーカーはパワーアンプ内蔵スピーカーですので、ミキサーの出力(ラインレベル)から直接接続しても十分な音が出ます。パソコン用の小型スピーカーはパワードスピーカーです。

パワーアンプのついていないスピーカーをパワードスピーカーと区別して「パッシブスピーカー」と言います。
パッシブスピーカーには電源は必要ありません(パワードスピーカーはアンプがついているので電源が必要です)。

7.電源を入れる際の注意点

音響機器は電源を入れる時に瞬発的な大音量を出力します。
この大音量によって機器がダメージをうけることを防ぐため、電源を入れる順番があります。

パワーアンプ→ミキサーの順で電源を入れた場合

ミキサー→パワーアンプの順で電源を入れた場合

一般的に、電源を入れるときはスピーカーから遠い順に入れ、電源を切るときはスピーカーから近い順に切る、と言われています。
要は、アンプの電源は最後に入れて最初に切るということです。

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