大阪のレコーディングスタジオ、リハーサルスタジオ、音響機材レンタル・Studio Orque

06-6994-3104 06-6994-3104 (10:00-24:00)

音楽レコーディング講座第二回: 音とは何か

人間は耳で音を感じます。耳の中の鼓膜の振動を脳が音として感じるからです。
では離れたところで鳴っている音が聞こえるのはなぜでしょうか?

音楽レコーディング講座の目次へ戻る

1.音とは何か

離れたところで鳴っている音が聞こえるのはなぜかというと、空気が音の振動を伝える役割をしているからです。
音が発生して人間に聞こえるまでを追ってみるとこのようになっています。
  • ① 物体の振動
  • ② 空気が物体につられて振動(音の発生)
  • ③ 空気中を音の振動が伝わる
  • ④ 空気を伝わった音の振動が人間の鼓膜を振動させる
  • ⑤ 人間が音として感じる

音とは 空気の振動 ということが出来ます。
ですので、真空状態の宇宙空間(空気等の音の伝達物がない)では音は聞こえません。
また、空気の振動が物体に伝わることもあります。
レコーディングではベースレコーディング時にアンプがある部屋のスネアドラムのスナッピーが鳴るなどの問題がありえます。
ドラムのある部屋で他の楽器をレコーディングする時はスナッピーをオフにしましょう。

2.音の速さ

音が空気中を伝わる速さというのがあります。

雷は空が光った後、「ゴロゴロ・・」という音が聞こえてきます。これは音が光より遅いせいです。
音の速さはおおよそ下記のように表されます。

340+(気温-15)×0.6 m/s

この式が表すことは、音は気温15度で1秒に340m進むくらいの早さであること、暑いと少し速くなり、寒いと少し遅くなる、ということです。
秒速340mというとすごく速い気がしますが、レコーディングではこの速さ(遅さ)は無視できるものではありません。

ルームマイクの波形の遅れ

例えば、音源から10m離れたところにあるマイクは音の発生から約0.03秒遅れて録音されます。
0.03秒というと一瞬ではないかと思われるかもしれませんが、音楽の「ノリ」を変えるには十分な時間です。

3.その他の音の性質

  • ・硬い物体にぶつかったら反射する
  • ・やわらかい物体(ふとんなど)にぶつかったら吸収される
  • ・物体を透過する
音は物体にぶつかった時、一定量は反射し、一定量は吸収され、一定量は物体を透過します。
一般的に重いものほど音を透過しにくく、柔らかいものほど音を吸収しやすく、硬いものほど音を反射しやすい、という性質があります。
これは録音部屋の制作時に問題になります。
録音部屋は、防音性能が高く(音を通しにくい)、内部で適度な吸音と反射がある部屋でなければいけません。
部屋内部の音の反射と吸音を考えることをルームアコースティックと言います。
  • ・発信点から球面状に広がっていく(球面波である)
音は音源から四方八方に飛んでいきます。従って、部屋の中で音を発信した場合、無数の音の反射が起こります。
私達の方向に飛んできて耳に直接はいる音を 直接音 と言います。
天井や壁に反射して私達の耳に入る音を 間接音(反射音) と言います。
この間接音というのは、想像以上に大きな比率を占めています。
実は、私達が日常生活で聞いている音の50%以上は間接音であり、カーネギーホールに至っては直接音1に対し間接音8の割合と言われています。
  • ・減衰する
音は距離の二乗に反比例して小さくなっていきます 。距離が2倍になれば音の大きさは4分の1になるということです。
野外で演奏を行うときは反射が殆ど無いので上記に近い状態になります。
逆に室内で演奏を行う場合は、反射音がたくさん聞こえているので、減衰は聴感上緩やかになります。
野外で演奏するときに、室内で演奏するときより音が小さく聞こえるのはこのためです。

4.音の表し方と、音の大きさ、高さ

音は振動ですので、波で表します。
音の波を 音波 と言います。
物理的には実際は 疎密波(縦波) なのですが、視覚的に見るときには見やすさの問題上、図のように横波として表示して見ます。

バスドラムの波形を拡大したもの

横波表示した時、 振幅(波の高さ)は音の大きさ を、 波長(波の細かさ)は音の高さ を表します。
振幅(波の高さ)が大きいほど、音が大きい音であるということです。
波長が短い(波が細かい)ほど高い音、波長が長い(波が横に広い)ほど低い音、ということです。

ハイハットの波形

バスドラムにくらべ広い波がなく、細かい波が多いですね。 つまり、低音がなく、高音が多いことがわかります。

5.音の高さの表し方

上の波形からもわかるように、音の高さとは振動のしかたの違いです。
早い振動の音は高い音、ゆっくりな振動の音は低い音 、ということです。
ですので、音の高さは1秒間あたりに何回振動しているか、つまり「振動数」で表します。
波を考える場合、「振動数」は「周波数」と言い換えるのが一般的ですので、音の高さは 周波数 で表します。
周波数(振動数)の単位はヘルツ(Hz) です。
「440Hz」は1秒間に440回波打っている音(1秒間に440回振動する音)です。
デジタル解像度の時にも「Hz」が出てきたと思いますが、あれは1秒間に何回サンプリングしているかを表しています。
「Hz」とは「1秒間に何回」を表す単位で、デジタル解像度のサンプリング周波数を表すときにも、音の周波数を表すときにも、両方使います。

6.音階と基音

前項で音の高さは音の「振動数」=「周波数」で決まると述べました。
ドレミファソラシドの音階は周波数で表すことが出来ます。
ギターのチューナーで「440Hz」等の数字を見たことがあると思いますが、あれは「ラ」の音を何ヘルツにするかの設定です。
では、ピアノの「ラ」とギターの「ラ」の違いは何でしょうか?

ギターの「ラ」

ピアノの「ラ」

波形で見ると、似ても似つかぬ波形です。
実際の楽器の音には様々な音がごちゃごちゃに混じっており、その混ざり具合が楽器の音色となります。
そして、音階を持つ楽器の音には、音階の周波数の音が他の音よりたくさん含まれているので、音階を持って聞こえます。
音階の周波数の音を 基音 と言い、基音の倍数の周波数の音を 倍音 といいます。
基音のみを発生させる楽器は物理的構造上電子楽器以外にありえません。
基音が発生すると物理的に必ずなんらかの倍音が発生し、そして演奏上必ず物理的雑音が発生します。
雑音とは例えばギターなら弦を弾く「バチン」という音、笛なら息を吹き入れる「シュー」という音で、これらは音程感には無関係ですが、楽器の音色としては重要なものになります。


画像引用元:Sound MagicianⅡ

逆に、ドラムなどの打楽器は、基音が目立ちにくいために音階を意識することはあまりありません。
実際には打楽器も基音は必ず存在するので、ドラムの音にも音階を聞き取ることは出来ます。
シビアなレコーディングでは、ドラムやコンガなどの打楽器を音階を意識してチューニングすることがあります。

サイン波

一切の雑音および倍音のない、基音のみの音としては、 サイン波 があります。
「サイン波」の音はNHKの時報など、現代社会の様々な場面で使われています。
これは電子的に作った音で、自然界には存在しません。

7.人間に聞こえる音の高さ

健康な人間は低い音は20Hzまで、高い音は20000Hzまでを聴くことが出来ると言われています。
この範囲の外の音は「超音波」と言い、人間には聞こえません。
犬や猫などの動物は人間に聞こえない高音まで聴くことが出来るので、それを利用した犬猫撃退用の超音波発生器は街角で見たこともあるかと思います。
また、人間の聴力は老化により減衰していくので、年をとると高音から聞こえなくなっていきます。
音楽も20Hzから20000Hzの間で作ります。
音楽制作に使用する、特定の周波数を上げ下げするエフェクター「EQ」=「イコライザー」も20Hzから20000Hzまでしか調整できないものが一般的です。
そして、人間は1000Hzあたりが最も聞こえやすいので、多くのイコライザーは1000Hzが真ん中にあります。

Protoolsのイコライザー画面の一部

グラフの下側の数字が周波数です。左端が「20」、中心が「1k」、右端が「20k」となっていますね。

8.音と電気とデジタル情報

空気の振動である音は、マイクなどで電気信号に変換することが出来ます。
電気信号に変換することで、その電気信号を大きくしたり、エフェクトをかけたりすることができます。
また、電気信号はスピーカーなどで音に戻すことが出来ます。

ライブのPAシステム

また、電気信号となった音はデジタル信号に変換し、パソコン等に記録することが出来ます。

パソコンを使用したレコーディングシステム

パソコンに記録されたデジタル信号は、CDなどにコピーされ、家庭のコンポなどで音にして再生することが出来ます。

CD再生システム

このように、現代の音響機器では、 音を電気信号やデジタル情報に変換して取り扱います

9.電子楽器

現代の電子音響機器の使用において音は必ず電気信号になります。
ならば最初から電気信号でいいじゃないかということで、電気信号を直接発信する楽器があります。
  • 1.ピックアップのついた楽器(エレキギター、エレキベース等)

エレキギター、エレキベース等のボディには「ピックアップ」というものがついています。
ピックアップには2種類のタイプがあります。

  • マグネット・ピックアップ


画像引用元:Wikimedia Commons

金属弦の振動によって発生する 磁界の変化を電流として出力 するタイプです。
音を拾っているのではなく、弦の振動を電流にしているといえます。
エレキギター、エレキベースのピックアップはこれが使われています。

  • ピエゾ・ピックアップ


画像引用元:Wikimedia Commons

弦楽器のブリッジや楽器本体に取り付け、 楽器の振動を電気信号にして出力 します。
バイオリンや打楽器、アコギなどのアコースティック楽器によく使用されます。
マグネットよりハウリングが起こりやすいです。

  • 2.シンセサイザー、サンプラーなどの電子楽器

実際には音を発生させず、電気信号のみを発信する方法で出力する楽器です。
スピーカー等がないと音が出ません。

  • デジタルサンプリングシンセサイザー


画像引用元:Wikimedia Commons

デジタル情報として記録してある音を、電気信号として出力 します。
ピアノやドラムなど、数百種類の音色が内蔵されている場合があります。

  • アナログシンセサイザー


画像引用元:Wikimedia Commons

発信機から電気信号を出力し、電気的に手を加えて音色を作り、出力 します。
アナログシンセでしか出せない独特の音というのがあります。

10.電子楽器の集音

電子楽器の集音には2種類の方法があります。
  • 1.直接電気的に取り込む

電子楽器から出力された電気信号を直接拾う方法です。レコーディングでは ライン録音 といいます。
ライン録音時は通常、「DI(ダイレクトボックス)」と呼ばれる機械で電気信号を取り込みます。

  • 2.スピーカーで音を出してマイクで拾う

エレキギターなどでは演奏者がアンプで音を作るので、アンプも楽器の一部とみなし、この方法をよく使います。

余談

余談ですが、一般的にギターアンプ、ベースアンプとは信号の増幅器である アンプ とそれを出力する スピーカー をセットにして
「ギターアンプ」「ベースアンプ」と呼んでおり、この呼び方は少々特殊です。

”アンプ”とはそもそも”アンプリファイア”の略で、電気的には「増幅器」全般を指します。
マイクから出た電気信号を小から中へ増幅する機器を「マイクプリアンプ」、ミキサーから出た電気信号を中から大へ増幅する機器を「パワーアンプ」と言います。
ギタリスト、ベーシストの方は「アンプ」というとマーシャルやアンペグしか思い浮かばない方も多いと思いますので、誤解しないでくださいね。

ギターアンプ、ベースアンプの中でもマーシャルやアンペグなどの製品は、アンプとスピーカーが別になっているものがあります。
アンプ部分を ヘッド 、スピーカー部分を キャビネット と言います。

対してアンプとスピーカーが一体になっているギターアンプ、ベースアンプを コンボアンプ と言います。
下の写真はRolandのJC-120ですが、これはコンボアンプになります。

音楽レコーディング講座の目次へ戻る