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音楽レコーディング講座第一回: レコーディングの完成品とは

ミュージシャンがレコーディングすることの目的は、関係者配布用デモ制作、バンドメンバーへの新曲音源配布、販売用音源作成等様々ですが、完成品としてあるべき形は決まっています。
完成品は 解像度が44.1kHzで16BITのステレオインターリーブのオーディオデータ です。

※2023年現在、映像制作用途や配信向けに、マスターを24BIT48kHzで出力することも多く、多様化しています。

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1.音楽CDに入っているモノとは

ほとんどの人は音楽CDを再生して音楽を聴いた経験はあることでしょう。
CDはミュージシャンがレコーディングして作られたものです。
つまり、CDはレコーディングの完成品ということが出来ます。

CDには何が入っているのでしょうか。
パソコンを使用して音楽CDの中身を見てみましょう。

これは市販されている筆者のCDから、1曲をパソコンに取り込んで表示した画面です。
これを拡大して見てみましょう。

2本の波形グラフが確認出来ると思います。
これがCDに記録されている音です。
音はパソコンなどで視覚的に表示すると、このように波形グラフで表されます。
この2本の波形グラフがレコーディングの完成品 解像度が44.1kHzで16BITのステレオインターリーブのオーディオデータ です。

2.ステレオとは

「2本の波形グラフ」と聞いて不思議に思った人もいるかもしれません。
パソコンに1曲だけ取り込んだところ、前述のように2本の波形グラフが表示されます。

この2本はそれぞれ L (Left:左)と R (Right:右)です。

今日の音楽再生機器は、左右(LとR)に置かれた2つスピーカーから音を出すという方法で音楽を再生します。
先ほどの波形グラフを音楽再生機で再生すると、上の波形を左(L)のスピーカーから、下の波形は右(R)のスピーカーから再生されます。

このような音楽再生方法を ステレオ と言います。
「ステレオ」に対し、一つのスピーカーで再生する方法を モノラル と言います。

ステレオの音声データは、中身としては前述のように2本になっているのですが、数えるときは2本セットで1つのデータと数えます。
音声データがステレオとして2本セットになっていることを ステレオインターリーブ と言います。

3.ステレオの必要性

ステレオとは 2本の音声データを左右のスピーカーで別々に再生する方式 です。
なぜこの方法が世界的に採用されているのでしょうか。

下図の波形を見てみましょう。

上の波形(L側)と下の波形(R側)でずいぶんと形が違いますね。
上の波形(L側)は大きく、下の波形(R側)は小さいです。
この部分をステレオ再生機器で再生するとどうなるでしょうか。

ギターが左側から聞こえて来ると思います。

このようにステレオ再生では、 右スピーカーと左スピーカーから異なった音を再生する ことによって、
様々な音響効果を作り出すことが出来ます。

例えば…
  • ・左からギターが聞こえて、右からピアノが聞こえる
  • ・合唱隊の歌が自分を取り囲むように様々な方向から聞こえる
  • ・音源がスピーカーの間を移動しているように聞こえる

現代の音響機器においては、音楽も映像音声も、ステレオ方式とするのが一般的です。
市販のテレビやコンポ、ポータブル音楽プレイヤー、ライブハウス音響システムなども、ステレオ再生を前提に作られています。

4.レコーディングで完成音源が出来るまで

音楽のレコーディングにおいて、完成品の音楽データが出来る過程はどのようになっているのでしょうか。
音楽制作の手順は大きく分けて3段階あります。
  • ① 録音(レコーディング)
  • ② ミックス
  • ③ マスタリング
完成まで順を追ってみていきましょう。

① 録音(レコーディング)

演奏者に演奏してもらい、それをマイクなどで録音します。
マイク一つにつき、1つの音声データが生成されます。
例えばドラムをマイク10個を使って録音すると、10個の音声データとして記録されます。
このとき、その10個の音声データは、それぞれ個々に参照できるように、別々の10個の場所に保存されます。
その保存場所のことを トラック と言います。

トラックの数は、楽器の数ではなく、マイクの数になります。
音楽のレコーディングにおいてはたくさんのトラックが必要で、1曲につき数十から百以上のトラック数になることもあります。

このようにして必要な音をすべて録音終了したら、録音作業は完了です。

ちなみに、「レコーディング」という言葉は、一般的にはミックスとマスタリングを含めた制作全体を指す場合がありますが、制作現場においては録音作業だけを「レコーディング」と言い、ミックスやマスタリングと区別します。

② ミックス

録音時点ではたくさんの音をバラバラに記録しましたが、市販の再生機で再生できるようにするためにはステレオの形にまとめなければいけません。
音というのは合成することができるので、各トラックの音声データを合成して1つのステレオの音声データを作ります。
この作業を ミックス と言います。

実際にはこの時、ミックスをする人(ミキシングエンジニア)はただ音を合成するだけではなく、録音してある各音に様々な処置を施した後、絶妙のブレンド具合で音を混ぜ、心地よい音楽を作り上げていきます。
同じ曲を同じ楽器構成で録音しても、出来上がる音楽はミックス次第で様々な表情に変化します。
音楽制作において、ミックスという作業は、エンジニアの腕の見せどころと言えるでしょう。

具体的にはトラックを個別で、または複数同時に再生して音を確かめ、各トラックにエフェクトを付加し、各トラックの再生音量を調整します。
そして最後にすべてのトラックを同時に再生し、改めてステレオトラックに録音することによってステレオの形に合成します。

ミックスを経て出来上がったステレオインターリーブの音データを 2mix (ツーミックス)と呼びます。

③ マスタリング

2mixが完成したら制作完了!ではありません。
最後にこの2mixをさらに調整し、CDアルバムに収録されるのに最適な形にします。
この作業を マスタリング と言います。
次の画像はマスタリング前のトラック(上)とマスタリング後のトラック(下)を並べたものです。
マスタリング後のトラックとは、つまるところCDに収録されている音です。
どのように変化しているか見ていきましょう。

まず、マスタリング後の波形はマスタリング前より縦に大きくなっています
波形の縦の振れ幅は音量です。
マスタリングでは、 2mixから音量を上げる という処理が行われます。
しかし、CDに収録できる音量にはデータ上の限界があるので、マスタリング後の波形は限界音量で平になっています。
限界まで音量があげてあるということです。

次に、マスタリング後の波形は最初と最後の部分がちょん切られていますね。
ちょん切られているのはマスタリング前2mixの波形で見る限り、波形が縦にふれていない部分=無音部分です。
マスタリングではこのように 曲の最初と最後の無音部分を調整する 、という処理も行われます。

ここで、各工程での音源の変化を聴いてみましょう。

  • ・レコーディング後、ミックス前の2mix

  • ・ミックス後の2mix

  • ・マスタリング後

マスタリング後は音量が大きくなっているのが分かると思います。

音量調整と曲間の無音部分調整が完了したら、あらためてマスターデータとして記録します。
この時、 デジタル解像度をCDの規格に合わせて「44.1kHz 16BIT」に落とす という処理を行います。
これでマスタリングも完了し、制作完了となります。

次はデジタル解像度について説明します。

5.アナログとデジタル

今日のレコーディングはパソコンを使用して行うことがほとんどです。
また、現代の音楽記録メディアはCDなどが一般的です。
パソコンやCDはデジタルデータというものしか扱えません。
パソコンやCDに音を記録する以上、音もデジタルデータとして記録することになります。

デジタルデータの正体は数字の羅列です。
数字であるということは0の次は1になる、ということです。
0と1の間を表す数字はないのです。
0から1への変化をデジタルで記録する場合、0の次はいきなり1になるというような、飛び飛びの変化として記録されます。
このように データを数字に置き換え、変化を飛び飛びにして記録する方式 デジタル と言います。

それに対して自然界の事象は変化が連続的です。
ニュートンはりんごが木から落ちる様子を見て重力に気づいたとされていますが。りんごの落下は連続的現象です。
つまり、落ちるのは一瞬ですが「落ちている最中」という瞬間は無限に存在します。
このように 変化が連続的で「ある点とある点の間」が無限に存在する様子 アナログ と言います。

音はもともと自然界のものなので、本来は変化が連続的、すなわちアナログです。
これをパソコンに記録するとき、デジタルに変換して記録します。
波形で表すと下図のようになります。

元々の音はなめらかな曲線で表されますが、デジタル変換された波形はギザギザしていますね。

余談

ちなみに、音楽の話の中での「アナログ」は、様々な意味で使われる厄介な言葉です。

アナログテープ = 磁気テープ
アナログ盤 = レコード
録音時にアナログ段で処理する = デジタル化してパソコンに記録される前段で電気的に処理する

…などなどです。

6.音のデジタル記録における解像度とは

デジタル変換された波形は元々の音の波形と比べギザギザしています。
このギザギザが細かいほど元の波形に近い形(=元の音に近い)となります。

このギザギザの細かさを 解像度 と言います。
波形グラフの横軸は時間、縦軸は音量です。
なので、縦方向に細かくギザギザしているほど音量変化の解像度が高く、横方向に細かくギザギザしているほど時間変化の解像度が高い、と言えます。
波形グラフの横方向のギザギザの細かさ=時間変化の解像度を サンプリングレート 、縦方向のギザギザの細かさ=音量変化の解像度を ビットデプス と言います。

サンプリングレートの単位は Hz(ヘルツ) です。
サンプリングレートとは 「波形グラフで横方向1秒の間に何回ギザギザしているか」=「1秒間に何回音が変化するか」を表しています。
例えばサンプリングレート44100Hzのオーディオデータでは、波形グラフで横方向1秒間の間に44100回のギザギザが出現し、再生すると1秒間の間に44100回音が変化しています。

ビットデプスの単位は BIT(ビット) です。
ビットデプスとは 「波形グラフ縦方向で最大何回ギザギザしているか」=「何段階の音量変化を表せるか」を示しています。
例えばビットデプス16BITのオディオデータでは、波形グラフで縦方向に最大65536回のギザギザが出現し、再生した時には最大で65536段階の音量変化を表せるということです。
※BITは2進数の桁数で表します(16BITは、2の16乗=65536段階)。

音楽CDには「サンプリングレートは44.1kHz、ビットデプスは16BITで記録しなければならない」という決まりがあります。
※k(キロ)は1000を表す単位なので、44.1kHz=44100Hz

7.実際のレコーディング時の解像度

実際のレコーディング現場においては、「96kHz、24BIT」等の 音楽CDより高いデジタル解像度で録音するのが一般的 です。

Pro Toolsセッション開始ウインドウ

録音時のサンプリングレートとビットデプスを設定できる

そしてミックスを経て、マスタリング時にCDの解像度に落とします。

Pro Toolsバウンスウインドウ

書き出すステレオデータのサンプリングレートとビットデプスを設定できる
ステレオ方式についても「マルチモノ」と「ステレオインターリーブ」が選択可能

実際にパソコンを使用してレコーディングする時は、サンプリングレートもビットデプスもこのように指定するだけです。

8.パソコンで音楽CDを作成するときの注意点

音楽CDには「サンプリングレートは44.1kHz、ビットデプスは16BITで記録しなければならない」という決まりがあります。
市販されているCD再生機器には、上記以外の解像度で記録されたCDの再生を保証していない場合があります。
音楽CDにする目的で音楽制作ソフトから2mixを書き出す場合、必ず44.1kHz 16BITで書き出すようにしましょう。

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