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音楽配信サイトとラウドネスついて

音楽は配信する時代。
音楽配信サイトにはラウドネス基準というものがあり、必ずしもマスタリングした音量そのままでリスナーに届くわけではありません。
音楽配信を重視した活動を行う場合は、音楽配信サイトのラウドネス基準を考慮したマスタリングを行う方が有利と言えます。
音量を上げるデメリットを含め、今回はラウドネスについて説明します。

専門家向けの記事ではありません。
わかりやすく説明するために、厳密な言葉遣いを避けています。
例えば「平均」などの言葉は厳密には「平均」とは言わない、などの間違いが含まれておりますので、あらかじめご了承ください。

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1.なぜ音量を上げるのか

音楽制作の過程では、マスタリングの時に音量をあげて、音量感のある仕上がりにすることが多いかと思います。
なぜこのようなことをするかというと、3つほど意味があるかと思います。

1.アルバム内での各曲の音量調整
音楽アルバムを聴くとき、1曲目がすごく大きい音量なのに、2曲目になったら急に音量が下がる、というようなことがあっては不便です。
そのようなことのないように、ミックスダウンが終わったら、各曲単位で音圧や音質を調整するマスタリングを行い、アルバム全体を通して聴きやすい作品に仕上げます。

2.市販の他の作品と比べて音量調整
あるアーティストの作品を聞いた後に、別のアーティストの作品をかけたらスピーカーから爆音で聞こえてしまった、などということがあっては世の中不便です。
そのようなことのないように、市販の音源は大体同じような音量感になるよう調整すべきであり、そのようにマスタリングします。

3.音量感がある方が迫力があるから
人間は、大きい音の方が迫力があると感じます。
音楽に迫力を求める場合、音量感が大きく感じられるようなマスタリングをします。

以上が、マスタリングで音量を上げる主な理由かと思います。

2.ラウドネスとは

ラウドネスとはその音源の「音量感」を数値化したものです。
人間は、一瞬だけ大きな音を聞いても音量感が大きいとは感じません。
音量感が大きいと感じるには、その音楽音源の音量の「平均」が大きい必要があります。
ラウドネスとは、その音源の時間的音量変化をおしなべて、人間が感じるであろう音量感を数値化したものです。
単位は「LUFS」です。
LUFSの数値は必ずマイナスになります。
例えば「-6LUFS」の音源は「-14LUFS」の音源よりラウドネスが大きいということになり、実際に聞こえる音量感も大きいです。

もちろん、音量を上げると、当然ラウドネスも上がります。
なぜ音量という尺度では不十分かというと、最大音量が大きい音源がラウドネスが大きいとは限らないから、です。
一瞬大きな音が鳴る音源でも、全体的に音が小さいと、人間には「音が小さい音源」と感じられます。
なのでラウドネスは(例えばピークメータなどよりも)「人間が感じる音量感」をより正確に表した尺度です。

ラウドネスは、DAWのマスタートラック等にメータリングプラグインを挿すことによって測ることが出来ます。

3.音源の音量には限界がある

音源の音量は上げ放題ではありません。
DAWなどのメーターで、最大値(0dB)以上の音量はどうやっても出すことが出来ません。

なので、音が大きく聞こえるようにしたい場合、「ラウドネス」を上げることになります。

具体的には、コンプレッサーやリミッターなどを使用して、音の大きな部分を潰した上で、全体の音量を底上げするによって、大きなラウドネスの音源を作ることが出来ます。

4. 配信サイトの仕組み

配信サイトには、CDで音楽を聴くときとは異なる、特別な仕組みがあります。 それが「ラウドネス基準」です。

配信サイトは、アップロードされた音源のラウドネスを検知し、大きいラウドネスの音源は音量を下げて配信する、ということをします。

しかし、元々ラウドネスが小さい音源はあまり音量を下げないか、そのまま配信します。

ここに、-6LUFSと-14LUFSという、異なるラウドネスでマスタリングした二つの音源があったとします。

ラウドネスのイメージはこんな感じです。

この二つの音源は、配信サイトを通過すると、このようになります。

先ほど、ラウドネスの大きい音源を作るには、リミッターなどで音の大きい部分を潰す必要があることを説明しました。
ラウドネスは結局同じになるとして、音質としてはどちらが有利でしょうか

5. 各配信サイトのラウドネス基準

配信サイトは「ラウドネスの大きい音源の音量を下げる」ということをしますが、どの程度以上を「ラウドネスが大きい」と判断されるかは、各配信サイトによって異なります。
一般に、各サイトのラウドネス基準は以下のようになっていると言われています。

YOUTUBE -14LUFS
Spotify -14LUFS
Apple Music -16LUFS
Amazon Music -14LUFS
Instagram -14LUFS
Soundcloud -8LUFS

つまり、上のサイトでは、それらのラウドネス基準の数値より大きいラウドネスの音源をアップした場合、ラウドネス基準値まで音量を下げられる、ということです。

検証している方も多数おられ、「音楽配信 ラウドネス」などで検索するとたくさんのサイトが出てきます。
詳しく知りたい方は調べてみてください。

個人的にも、自分がマスタリングした音源をYOUTUBEのMVなどで聞いてきる限り、上の数字は概ね正しいように感じています。

6. YOUTUBEの処理を調べる方法

YOUTUBEではどの程度音量が落とされているかを調べる方法があります。

YOUTUBEで動画を再生し、動画の上で右クリックをすると「詳細統計情報」という項目が出るので、それをクリックします。
すると、下記のようなウインドウが動画左上に表示されます。

このウインドウの中の「Volume / Normalized」のところを見ますと、「100% / ??% (content loudness ??dB)」というような表示があると思います。
この「??%」「??dB」というのが、YOUTUBEが下げた音量です。
この写真の例ですと、音量は43%まで下げられており、dBでいうと-7.4dB下げられている、ということです。

7. まとめ

以上、配信サイトとラウドネスの話でした。
音源制作の際は主にマスタリングの時に出る話かと思います。

もちろん、CDや、配信サービスを利用せず直接データ送付等で販売・配布するときなど、大きなラウドネスが効果的な場合もあります。
また、大きなラウドネスでもダイナミックに聞こえるように処理するのが、マスタリングのテクニックということになります。

しかし、無理なリミッティング、大音圧化は、元の波形を変えている以上、必ず音質が変化します。

リスナーにどのように届くかを理解して、エンジニアとうまく相談し、より良いマスタリングができれば良いですね。

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